龍を封じ込めた 室生寺(の五重塔)

by Akiko

室生寺五重塔:杉をバックに朱が映える

正確には、五重塔の最上部九輪の上の宝瓶の中(普通は竜車・宝珠。ここの宝蓋・宝瓶は、珍しい)。創建に関わった僧侶修円が、閉じ込めたとのこと。なぜ・・・。どの時代からその逸話があるのかわからないが、やはり九山八海とも言われるその独特な室生火山群の地形からできた洞窟や淵で住む中で、人々が古い時代から継承してきた龍伝説が日常の様々な部分に残っているのが、面白い。地域の龍神渓谷の上流は青龍神、下流は赤龍神が水神として祀られ、善女龍王を祀る龍穴神社は室生寺よりも古い。吉祥龍穴、持宝吉祥龍穴、沙羅吉祥龍穴・・・って、なんぼほど龍が棲んではんねん・・・。

1998年の台風時、倒れた杉の大木で折れた屋根の修復時に使われた木材の年輪から、794年に伐採されたことがわかったとのこと。つまりここの五重塔は法隆寺に次いで、二番目に古いことになる。

室生寺金堂の木造釈迦如来立像(平安時代)や弥勒堂の弥勒菩薩(奈良時代)の他、国宝や重要文化財が、思い存分拝観できる。が、境内にさらっと置かれている石仏・地蔵の中にも、個人的にはもっと評価されても良いのでは、と思う程、味のあるものがたくさん。

境内の石仏・地蔵は、景色に同化

幼い頃から遠足や家族のピクニックで何度も訪れた室生寺。当時はもちろん歩くのが目的で、正直、駅から山迫る道のりをこれでもかと必死で歩かされたことだけが、今も強烈に記憶に残る。が、大人になってから訪れると、あの渓谷と緑を含めての室生寺だということが、よくわかった。

見てください、この緑と完璧に調和した金堂を。

緑にたたずむ金堂

戻って、五重塔。屋外にある五重塔の中では日本で一番小さな五重塔。その塔が静かに、でも強烈なインパクトで迫ってくるのは、やはり周りに堂々と立つ杉や緑に融合しているから。それにしても、1998年の台風の時、宝瓶からあの水神である龍を出していれば・・・(!)今も、あの九輪の上から、閉じ込められた龍は私たちを見下ろしているはず。

あの辺り、か・・・