宇陀市鳥見山(とりみやま)
by Akiko
いつ来ても心ときめく。秋には息を呑む紅葉。冬には静けさの雪。春には匂うツツジ。夏には目を奪う緑。
近年の鳥見山中腹遺跡の発掘調査では、紀元前千年頃の水晶片が発掘された。付近は縄文・弥生時代から人が住んでいたか、狩りのキャンプ場だったかもしれない。その豊かな自然からも、良好な狩猟採集地だったことは想像に難くない。
匂玉池の静かな水面を見ながら、3000余年前の鳥見山を想像して欲しい。
“青年は穏やかな秋の日差しを背に受け、馬に揺られて狩猟に来ていた。髪は両耳の上で束ね、白い麻布の装束、腰には短剣。栗を拾う少女の髪は長く肩まで垂れ、鹿の皮を纏い、胸には薄紫に光る水晶片の首飾り。紅葉の赤が空の青に眩しい。”
鳥見山は、縄文・弥生時代を生きた先人の声を聞くためにも、車でなく是非歩いて登ってほしい。ルートはたくさんあるが、私は車の通らない静かな山道、東側からのルートをお勧めする。運が良ければ、木漏れ日に光る少女の胸飾りの水晶片が見られるかもしれない(妄想)。
歩き続けたご褒美は、なんと言っても見晴台に立った時の達成感。国つくりの神倭伊波禮毘古命(カムヤマトイワレヒコノミコト:第一代神武天皇)もここに立って、霧の向こうの壮大な二上山、葛城山、金剛山を愛でたはず。神々しいとは、まさにこのこと。
伝承では今から二六〇〇余年前、神武天皇は東征の時、天照大神が遣わせた八咫烏に導かれ、宇陀の地を通った。神武4年条には鳥見山に霊畤(れいじ:まつりのにわ)を立てて祀った。
私は幼い頃から家族と暇さえあればこの山に訪れた。春にはツツジ、初夏には新緑、秋には紅葉、冬には雪。「どの季節が一番良いですか」と聞かれと、困る。どの季節でもここに来ればその季節の一番良い顔があるから、不思議。お勧めスポットは、鳥見神社の社に色とりどりに彫られた神話に出てきそうな鳥獣や草花。登山・妄想・参拝をセットで楽しめる、いいことだらけの旅である。
所要時間:2時間(プラス妄想タイム、お好きなだけ)